一般社団法人 日本アレルギー学会

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【会告】 新型インフルエンザと喘息(改訂版)

更新日時:2009年11月17日

 

社団法人日本アレルギー学会
理事長 秋山 一男
ガイドライン委員長 西間 三馨

 今回の新型インフルエンザについては、国内外の報告を見ると喘息患者の割合が30%前後となっており、一般人口での喘息有症率を高く見積もっても 10~15%程度であるので、明らかに高率である。特に小児喘息は喘息重症度にかかわらずインフルエンザ重症化のハイリスク群に属し、急速に悪化すること があることがわが国の最近の調査により明らかになってきた。
いずれにしても、今回の新型インフルエンザは、従来の季節性インフルエンザと異なり、下気道の障害をより高頻度に生ずるおそれがあるので十分な注意が必 要と考えられる。小児喘息における新型インフルエンザの影響については、日本小児アレルギー学会のホームページを参照されたい。

http://www.iscb.net/JSPACI/

 なお、これまでの本学会発刊のガイドラインは以下のとおりである。

喘息予防・管理ガイドライン2009より
3.喘息の危険因子
(2)増悪因子
c)呼吸器感染症
ウイルス感染は、喘息をはじめとする慢性呼吸器疾患の増悪因子として重要である。気道感染の原因ウイルスとしてはライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、 パラインフルエンザウイルスなどのウイルスが重要とされている。さらにメタニューモウイルスによる喘息増悪も報告されている。RSウイルスやパラインフル エンザウイルスではウイルス特異的IgE抗体が産生されることが報告されている。ライノウイルス感染時において上気道はもとより下気道にもウイルスの存在 が確認されており、下気道へのウイルス感染の直接的な影響があることも推測される。ウイルス感染により炎症性メディエーターの産生遊離が起こり、アレル ギー反応を増強することが示唆されている。さらに、肺炎マイコプラズマ、クラミジア、百日咳などが増悪因子として働いている。

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008より
3)気管支喘息児と主なワクチン
(1)インフルエンザワクチン
インフルエンザウイルスなどの気道感染症は、喘息発作を誘発し、長期間気道過敏性亢進状態を続かせ、入院の要因となっている。喘息発作の24~85%が 気道感染と関連しているとの報告もある。このため、米国では喘息患者はインフルエンザ感染のハイリスク群で、毎年のワクチン接種が推奨されている。 『Global Initiative For Asthma(GINA)2006』では、中等症~重症の喘息患者には、毎年接種するよう指導すべきであるとしている。ただ、小児および成人に毎年接種し ても、喘息の増悪防止や喘息コントロールの改善はないが、現行の不活化ワクチンの副反応はほとんどなく、難治性喘息患者を含む成人患者および4歳以上の小 児患者には安全に接種できるとしている。
わが国では、抗インフルエンザ薬やインフルエンザ脳症などへの不安から乳幼児への接種希望が増加している。わが国のインフルエンザワクチン中の卵白アル ブミン量は、数ngと極めて微量でWHO基準よりはるかに少ない。これまでは、卵白RAST 3以上でも、卵加工品などを食べている児では、接種後の重篤な副反応の報告はなく、安全に接種できている。
卵完全除去治療中や卵接種後に重篤なアナフィラキシーを起こした児の場合、インフルエンザ罹患率や入院率、ワクチンの有効性や副反応発生率や重篤度、喘息の重症度、集団生活への参加の有無、家族数など多くの要因を考慮して接種の可否を判断する必要がある。
即時型副反応を予測できる有用な方法は見当たらない。分割接種(0.05ml接種し、異常がなければ残量接種)を行っている専門施設もあるが、保護者の強い希望や接種医に不安がある場合、接種ワクチンによる皮内テストも考慮しておく。

 

投稿日時: 2009.11.17

 
 
 


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