アレルギー疾患は過去50年以上にわたり世界的規模で増え続けており、いまや日本国民の2人に1人が何らかのアレルギー疾患を患っています。そこで、まずは国のレベルでアレルギー専門医に期待されていることを記します。国民からの「医療機関にアレルギー専門の医師を配置してほしい」、「アレルギーに関する情報を積極的に提供してほしい」などの要望に対して、2014年に「アレルギー疾患対策基本法」が公布されました。「アレルギー疾患を有する者が、その居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切なアレルギー疾患医療を受けることができ、国民がアレルギー疾患に関し、適切な情報を入手することができる」という基本理念のもと、医療体制の整備が急ピッチで進められています。中央拠点病院に加えて、各都道府県にアレルギー疾患医療拠点病院が選定されていますが、直接に診療を担うアレルギー専門医が今後ますます重要視されていくのは間違いありません。もちろん現在のアレルギー専門医教育研修施設は「アレルギー専門医の育成」に既に大きく貢献していますが、今までは各医療機関および各指導医の自主性に委ねられており、ともすると医療提供体制は大都市に集中する傾向がありました。今後の拠点病院体制では、全国民が「均等に正しいアレルギー診療の恩恵に浴することができる」ために適した医療連携体制や情報提供体制が構築されます。全国のアレルギー専門医は、その立場や地域は様々であっても、国民全体に正しい医療を行き渡らせる担い手であり、医療内容をより良いものに高めていくよう導いていく役目が期待されています。
ちょうど時期を同じくして、日本専門医機構の掲げる新専門医制度に則り、アレルギー専門医は「専門性が基本診療科別に限定されている」現在の立場から、様々な臓器に症状が生じるアレルギーを全人的に診ていく必要があるという視点を持った「Total Allergist」を目指すことになりました。すなわち、① 自身の基本診療科(内科、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科)のアレルギー疾患については、軽症から重症難治例まで全重症度の患者の診断・治療・管理が可能であり、② 他の基本診療科のアレルギー疾患についても、軽症あるいは合併症の範囲ならば診療を行うことができ、非専門医師からのコンサルテーションに応ずることができる知識を有する、という医師像です。この目標に向かって幅広い知識経験を集積し、良き医療を実践していくのが「望ましい」アレルギー専門医と考えています。それでは、どうすれば望ましいアレルギー専門医になれるでしょうか。具体的には、所属する医療機関のみならず地域全体に目を配りつつ、目前の患者の全身のアレルギーを診療していく、そして「患者における原因アレルゲンを見つける、患者に合った免疫療法を選び実施する、アナフィラキシー患者に対して原因に応じた適切なアレルゲン回避・危機管理・生活指導を行う」といった診療を実践し、必要な際は現場の医療スタッフや周囲の医師を指揮・指導する存在でもあります。わが国のアレルギー診療で重要な位置を占めるアレルギー専門医の究極の姿である「Total Allergist」を目指してみませんか。
アレルギー専門医になるために必要な研修内容や、専門医講習会・知識と手技を修得することのできる総合アレルギー講習会などの情報については、本学会のHPをご参照下さい。