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アレルギー診療での生物学的製剤(皮膚科)

更新日時:2018年5月17日

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皮膚アレルギー疾患で最近保険が適用された抗IgE抗体(オマリズマブ)と抗IL-4受容体抗体(デュピルマブ)について概説致します。

蕁麻疹の発症機序として、血清中のIgEがFcRI(高親和性受容体)に結合した状態で抗原によるIgEの架橋が起こると、マスト細胞からヒスタミンが放出され、血管の透過性が亢進して膨疹を生じることが挙げられます。ヒト化抗IgEモノクローナル抗体であるオマリズマブは、血清中のIgEを捕捉し、マスト細胞からのヒスタミン放出を抑制することで、蕁麻疹の症状を抑えると考えられます。難治性の慢性特発性蕁麻疹患者を対象に臨床試験が行われ、オマリズマブ投与群はプラセボ群に比べて、12週時点で週間そう痒スコアの有意な改善が認められました。以上より、2017年3月に特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)に対して保険が適用されました。食物、物理的刺激などの蕁麻疹の症状を誘発する原因が特定されず、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の増量などの適切な治療を行っても、日常生活に支障をきたすほどの痒みを伴う膨疹が繰り返して継続的に認められる場合に本剤を追加して投与します。通常、成人及び12歳以上の小児に、1回300mgを4週間毎に皮下に注射します。

アトピー性皮膚炎の発症機序に、IL-4やIL-13などのTh2サイトカインが重要な役割を果たしていることが知られています。ヒト型抗IL-4/13受容体モノクローナル抗体であるデュピルマブは、IL-4とIL-13を介したシグナル伝達を抑制することで、アトピー性皮膚炎の症状を抑えると考えられます。難治性のアトピー性皮膚炎患者を対象に臨床試験が行われ、デュピルマブ投与群はプラセボ群に比べて、16週時点で有意な皮疹の改善が認められました。以上より、2018年1月に既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対して認可が下りました。ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に本剤を用います。通常、成人に初回600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。

難治性の皮膚アレルギー疾患に対して生物学的製剤治療が導入され、患者さんの生活の質(QOL)が向上していくことが期待されます。

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