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口腔アレルギー症候群

更新日時:2018年6月1日

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近年、アレルギー診療において遭遇する果物や野菜による食物アレルギーでは、一人の患者さんが多種類の果実や野菜により症状が誘発されていることが少なくありません。このような果実アレルギーは花粉抗原と野菜や果物に含まれる抗原の交差抗原性に基づいており、まず花粉抗原により感作が成立し、その後、それらの抗原に対して交差反応性を示す蛋白質抗原を含む果物や野菜を経口摂取した際に主に口腔粘膜において過敏反応が誘発されます。

私たちは、何らかの食材による口腔内の反応を“口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome;OAS) ”と呼びますが、OASの概念は1987年 Amlotらにより提唱され、その後、花粉との交差反応性により新鮮な果物や野菜を摂取した際に生ずるアレルギー反応をpollen-food allergy syndrome(PFAS)と呼ぶようになりました。現在では、カバノキ科花粉(シラカンバ、ハンノキ)はバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)やマメ科、イネ科花粉(オオアワガエリ、カモガヤ)はウリ科果物(メロン、スイカなど)、キク科花粉(ブタクサ、ヨモギ)はセリ科野菜など、花粉と食物との関連性が明らかになっています。

PFASは、野菜や果物が口腔粘膜に接触すると、その直後から数分以内に口腔、咽頭、口唇粘膜の刺激感、かゆみなどが誘発されます。多くの症状は口腔内に限局し自然に消退しますが、時に消化器症状が誘発されたり、大豆(特に豆乳)やセロリ、スパイスではアナフィラキシーショックなど重篤な全身症状を呈することがあります。検査は、血中特異的IgE抗体の測定やプリックテスト(皮膚テスト)(図)を行います。プリックテストでは、生の野菜や果物を用います。

PFASの代表的な抗原として、ここでは、シラカンバ/カバノキ科花粉の主要抗原であるBet v 1を紹介します。Bet v 1は、分子量が17 kDaで、その一次構造の相同性や生理活性(リボヌクレアーゼ活性)から感染特異的蛋白質(植物が病原体に感染した際に、植物体内で生成されるタンパク質の総称; Pathogenesis-related protein、PR protein)-10ファミリーに属します。このグループにはMal d 1(りんご)、Pra a 1(さくらんぼ)、Pyr c 1(洋ナシ)、Api g 1(セロリ)、Dau c 1(人参)、Gly m 4(大豆、主に豆乳)が属し、Bet v 1 に反応するIgE が果実由来のPR-10 蛋白にも反応するため、シラカンバ/カバノキ科花粉症の患者さんは、これらの果物や野菜を摂取すると口腔内過敏反応などが誘発されます。野菜や果物に含まれる蛋白質は多くの場合、加熱処理や酵素処理などにより消化されるため、PFASの症状は口腔内に限局することになります。

近年の科学技術の進歩により、交差反応性抗原が明らかになり、さらにはそれらのリコンビナント抗原も開発され、私たちも利用できるようになりつつあります。PFASは、患者さんも多く、アレルギー専門医にとっては身近な疾患であると同時に、その予防法や治療法(免疫療法)の開発などが重要な研究課題として残されており、今後、進められていくことが予想されます。

アレルギー専門医を目指す若い先生方には、ぜひPFASの病態や検査に精通していただき、さらには、発症予防、治療法の開発を私たちと共に取り組んでいただければと思います。

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