一般社団法人 日本アレルギー学会

日本アレルギー学会公式サイトへ »
入会申し込み
各領域からの新着情報
第73回日本アレルギー学会学術大会
第10回総合アレルギー講習会
第6回臨床アレルギー講習会

アレルギー・免疫学の最新知見

更新日時:2018年5月23日

一覧に戻る

アレルギー性疾患の発症に関して、最近、バリア機能とその破綻による発症へのリスクが注目を浴びています。その発端になった研究には、以下に示すいくつか重要な知見があります。①皮膚バリア機能を担うフィラグリンの遺伝子変異がアトピー性皮膚炎の発症と関連があること、②皮膚表皮細胞下に存在するランゲルハンス細胞がタイトジャンクションをすり抜けて表皮内に侵入した抗原を捕捉する可能性があること、③体表面バリアへの環境因子の刺激が特有のサイトカイン(IL-25、IL-33、TSLPなど)や危険シグナル(尿酸、ATPなど)の産生を促し、これらサイトカイン・危険シグナルの刺激を2型自然リンパ球(ILC2)が受けることで大量のTh2サイトカインを産生すること、④免疫寛容が既に確立していても、皮膚バリア破壊が起点となり、抗原刺激が寛容破綻を誘導する可能性が示された「茶のしずく石けん」の臨床例、⑤乳児期の皮膚保湿によりアレルギー疾患の発症リスクが軽減された前向き臨床研究報告など、この10年以内にアレルギー疾患の発症機序や免疫寛容に対する考え方が大きくパラダイムシフトしてきました。また、特筆すべきは、ここに示した多くの知見は日本から発信されている点です。さらに、これらの基礎研究の進展を受け、特にアトピー性皮膚炎分野では、大手製薬企業やベンチャー企業において新規生物学的製剤の開発上市が進められています。

免疫学はアレルギーの発症を考える上で基盤となる学問であり、免疫学から見たアレルギー応答と臨床から得られる所見は車の両輪と考えることが出来ます。現在、臨床で使用されている舌下免疫療法や皮下免疫療法についても、今後、制御性細胞の誘導機序やその機能について基礎および臨床研究が進むことが予想されることから、さらに新たな治療標的の発見などに繋がる可能性が期待されています。また、最近、知覚神経末端にIL-4やIL-13の受容体が発現し、これがアトピー性皮膚炎の掻痒に関連することが報告されています。特にアレルギー領域において、アトピー性皮膚炎の掻痒治療はアンメットメディカルニーズの最たるものであることから、抗体療法の効果についても、今後の結果が期待されます。

一覧に戻る

このページの先頭へ