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アトピー性皮膚炎のupdate

更新日時:2018年5月23日

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アトピー性皮膚炎(AD)は、疾患負荷(病気が社会全体に及ぼす損害の指標)が大きい疾患で、痒みや外観への苦痛が労働生産性を著しく低下させます。平成26年の厚生労働省の患者調査では64%が20歳以上で、QOLスコアが低く、約6割にステロイド忌避の感情があるとされます。治療薬に関する総合満足度は、満足以上で30%しかなく、精神的負担が大きいのです。

ADの病態については、一種の症候群とすると理解しやすいです。皮膚のバリア機能異常とアレルギー疾患の混合した状態で重症化する場合があります。

発症に関して、新生児の皮膚の発達や腸管免疫を中心に研究が進んでおり、上皮細胞の免疫、皮膚や腸管の自然免疫、制御性T細胞の関与が指摘されています。予防では、皮膚バリアの改善を目指し、病態に腸脳相関や腸皮膚相関が関連しているとも言われて、腸内フローラを考慮したプレ・プロバイオティクス、或いは食品を用いた予防法が研究されています。乳児では経皮感作にともなう食物アレルギーの観点からも、乳児の皮疹に対してもステロイド外用剤や保湿剤を用いた早期介入が重要です。

治療の原則は、悪化因子の除去、保湿、痒みへの対応、患者教育があげられます。初期治療はステロイド外用でセカンドラインとしてタクロリムス軟膏があります。時に、黄色ブドウ球菌の感染や単純ヘルペスの再活性化による増悪に注意を要します。皮疹を長期に悪化させない事が重要です。このため、外用療法では、成人では血清TARC値を参考にステロイド外用剤を用いた綿密なコントロールを行います。プロアクティブ療法が推奨されており、再燃をよく繰り返す皮疹に対して、急性期の治療によって寛解導入した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的に(週2回など)塗布し、寛解状態を維持する治療を行います。

初期治療でコントロール出来ない場合は、全身療法では、シクロスポリンの内服やnarrow band UVBによる紫外線照射療法が行われます。この10年間新薬がありませんでしたが、2018年春に、Dupilumab(IL-4Rαを阻害);(IL-4/IL-13に対する抗体)を用いた抗体療法が中等症以上のアトピー性皮膚炎に適応されます。米国では、さらに、PDE4阻害薬外用剤が使用されている。将来、Tofacinib(経口JAK阻害薬)、Nemolizumab(IL−31に対する抗体;特に痒み)が認可される可能性があります。

ADでは、特に長期の薬剤使用による副作用を心配するため、乳児、幼児、学童、思春期、成人など、年齢に応じた対応が必要であり、患者教育が成果を上げるためには、心理的アプローチの重要性も考慮する必要があります。

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