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重症アレルギー性結膜疾患の治療

更新日時:2018年5月17日

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アレルギー性結膜疾患の治療―春季カタルに対する免疫抑制点眼薬―

春季カタルは、アトピー体質の学童、特に男児に好発し、上眼瞼の裏の結膜の直径1mm以上の巨大な隆起(石垣状乳頭増殖)や角膜周囲の結膜の堤防状隆起が特徴です。激しい痒みを伴いますが、角膜障害を伴うと、異物感、眼痛、羞明のため、目が開けられず、視力低下をきたし、登校できないこともある重症なアレルギー性結膜疾患です。重症な角膜障害の原因としては、結膜局所のTリンパ球からの各種サイトカインにより結膜から遊走してきた活性化好酸球やその顆粒蛋白による障害が考えられています。

従来、春季カタルの治療には、眼圧上昇の副作用に注意を払いながら高濃度ステロイド点眼薬が使用されてきましたが、2010年から、春季カタルの治療薬として2種類の免疫抑制点眼薬(カルシニューリン阻害薬)が保険適用となり治療の選択肢が広がりました。重症度に応じ、抗アレルギー点眼薬、免疫抑制点眼薬、ステロイド点眼薬を併用します。0.1%シクロスポリン点眼薬は、防腐剤を含まない1回使い捨て容器に入った水性点眼薬で1回1本、1日3回点眼します。0.1%タクロリムス点眼薬は、懸濁点眼薬で1日2回の用法です。0.1%シクロスポリン点眼薬は高濃度ステロイド点眼薬に比較し、効果の発現はゆっくりですが、ステロイド点眼薬との併用で1ヵ月後には重症な角結膜所見が改善し、ステロイド点眼薬併用例でもステロイド点眼薬の離脱が可能となっています。0.1%タクロリムス点眼薬は、早期に症状の改善が得られ、ステロイド抵抗性の重症例に対しても有効な治療薬です。春季カタルの重症度に応じて、いずれかを選択して用いています。

両点眼薬とも全身への影響はほとんどありません。シクロスポリン点眼薬は高分子であり、眼表面から眼内へはほとんど浸透しません。また、タクロリムス点眼薬使用中、血中濃度を測定した結果では、検出限界以下の症例がほとんどでした。投与中、ごく稀に角膜ヘルペスなどの感染症がみられることがありますが、一旦、免疫抑制点眼薬を中止し、感染症に対する治療に切り替えることで対処可能です。

免疫抑制点眼薬は春季カタルの治療に精通した眼科医が処方すべき治療薬ではありますが、保険適用となっている有用な治療薬があることをご紹介させていただきました。

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