一般社団法人 日本アレルギー学会

日本アレルギー学会公式サイトへ »
入会申し込み
各領域からの新着情報
第73回日本アレルギー学会学術大会
第10回総合アレルギー講習会
第6回臨床アレルギー講習会

専門医ならではのアレルゲン免疫療法~皮下注射法

更新日時:2018年5月17日

一覧に戻る

アレルゲン免疫療法は、アレルギー疾患の自然経過を修飾できる唯一の治療です。喘息を治療標的として行っても鼻炎や結膜炎も改善しますし、長期予後を改善し、新規アレルゲン感作を抑制する作用なども期待できます。この治療は20世紀初頭から行われてきましたが、当初にはあいまいだった機序が徐々に解明され、アレルゲン特異的なIgG4抗体によるアレルギー反応抑制作用や、制御性T細胞による2型免疫応答の抑制などが、臨床効果を導くと考えられるに至っています。アレルゲン免疫療法は、明確な理論に基づき、基本的な免疫応答系を変容させる治療と言えます。その点で専門医を志す先生方には、アレルゲン免疫療法を行うことで、アレルギー病態の基本的な仕組みに精通する機会を得られることになります。実際に皮下注射法のほうが舌下法より、効果が優れているとの報告があります。

アレルゲン免疫療法には皮下注射法と舌下法がありますが、専門医に任せるべきなのが皮下注射法です。皮下注射法には特徴がいくつかあります。一つは治療の完遂性が確実であるということです。舌下法が患者自身で行うのに対し、皮下注射法は医療機関で医師(または注射そのものは看護師)が行います。皮下注射法では、少量からはじめて、週1~2回徐々に増量しながら注射し、効果がでる維持量に達したら治療間隔をあけていけます。維持療法期では、1~2か月間隔の投与でも効果が維持できますので、患者の負担軽減にもつながるかもしれません。また注射部位の皮膚反応を見ることで、アレルゲン治療エキスへのIgE依存性免疫反応を確認することができます。患者の体調を医師自身が確認することで、専門医が当日の治療の可否を直接決定できます。舌下法が自己判断に依存する点とは大きな相違といえるでしょう。

皮下注射法は、専門医が施行することでメリットをより有効活用することができます。例えば治療エキス増量期の増量法を変更することなどが、診療技術として習得可能です。通常の週1回注射していく方法では維持量到達までに数か月程度かかりますが、増量を数日間あるいは数週間で終了させる特殊法としてラッシュ法あるいはクラスター法なども選択することができます。これらは治療効果の早期発現が期待できますが、副反応リスクが高くなるため、専門医が常勤する医療機関で施行することが原則です。

アレルゲン免疫療法はアレルギー疾患の本質に迫る根本療法であり、特に皮下注射法こそは、アレルギー専門医にぜひともマスターしていただき、患者さんのために実践していってほしい治療なのです。

一覧に戻る

このページの先頭へ