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第13回(2016年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

更新日時:2018年1月19日

 第13回(2016年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

第13回日本アレルギー学会学術大会賞は、第65回学術大会において発表された研究業績を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者18名について、2016年11月22日の学術賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、12月16日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。
授賞式は2017年6月16日第66回学術大会時の社員総会にて行われました。
 

受賞者(敬称略 五十音順) 

岩﨑成仁(大阪市立大学医学部付属病院耳鼻咽喉科)
「エンドトキシンを引き金としたIgE非依存性鼻炎症状の誘導」
  ◆受賞論文:アレルギーVol.66 No.7掲載
受賞理由:本研究は、OVA感作モデルと抗原特異的Th2細胞移入モデルを用いて、それぞれに負荷試験を行い、エンドトキシンから引き起こされるIgE非依存性の炎症の存在を明確にした。鼻炎発症の新しい経路についての検討であり、鼻アレルギー患者の治療において、広く応用できるものと考えられるが、この度の岩崎氏のアプローチは、他のアレルギー疾患における炎症機序の解明にも応用できるため、さらに意義深いものと考えられた。

受賞者のコメント:この度は第13回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。御指導を頂きました兵庫医科大学免疫学 善本知広教授、滋賀医科大学耳鼻咽喉科 清水猛史教授をはじめとした多くの関係者の方々に深く感謝申し上げます。
IgE抗体はアレルギー性鼻炎の症状の誘発に必須の因子です。しかし、アレルギー性鼻炎様症状を示すにもかかわらず、IgE抗体が同定されないような症例も存在します。本研究ではこのようなIgE非依存性の鼻炎症状に、抗原特異的Th2細胞とマクロファージが関与し、エンドトキシンが引き金となった新規のI型過敏症様反応が存在することを明らかにしました。この受賞を励みに、詳細な機序の解明に向けてさらに研究を進めていきたいと思います。
亀倉隆太(札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所免疫制御医学部門)
「アレルギー性鼻炎の新たな治療標的としての“エピイムノーム”の重要性」
  ◆受賞論文:アレルギーVol.66 No.2掲載
受賞理由:申請者は、ヒトアレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜上皮に上皮性サイトカインであるTSLP、IL-25、IL-33が発現することを確認した。この結果は、アレルギー性鼻炎でも気管支喘息やアトピー性皮膚炎と同様に上皮性サイトカインが病態に強く関与していることを示した。また、アレルギー性鼻炎患者の末梢血液中に2型濾胞ヘルパ−T細胞(Tfh2:IL-4産生細胞)が増加し、アレルギー性鼻炎と気管支喘息の合併症例では制御性B細胞(Breg)が低下していることを確認した。この結果は、Bregの低下がTfh2の増加をきたし、アレルギーの増悪をもたらすことを示唆した。これらの研究は、アレルギー疾患の治療に応用できる可能性があり優れた研究と評価された。

受賞者のコメント:第13回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。今回の受賞テーマにあります、エピイムノーム(粘膜上皮を構成する上皮細胞とリンパ球などの免疫細胞とのクロストーク)は近年の研究で、免疫アレルギー疾患の病態形成に重要な役割を担っていることがわかってきました。今後もエピイムノームに着目した独創性のある研究を進め、免疫アレルギー疾患のさらなる病態解明と診断・治療につながる臨床応用を目指して邁進いたします。今回の研究にご指導とご協力を頂いた、札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所免疫制御医学部門の一宮慎吾教授、札幌医科大学医学部耳鼻咽喉科の氷見徹夫教授、その他多くの関係者の方々に、心から感謝を申し上げます。
鈴木勇三(浜松医科大学第二内科)
「慢性好酸球性肺炎の長期予後の検討(多施設共同研究)」
受賞理由:申請者らは、135例の慢性好酸球性肺炎 (CEP)患者を対象として、本疾患の長期予後に影響を与える因子を検討した。その結果、肺機能低下の予測因子としてrelapse自体は重要ではなく、治療前の肺機能がCEPの長期予後の規定因子であることを見出した、本研究は、疾患治療中のステロイド減量方法、とりわけ肺機能障害の無い症例における積極的な薬剤減量・中止の妥当性を支持するエビデンスと示した点で価値が高い。

受賞者のコメント:この度は第13回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り大変感激しております。このような名誉ある賞を受賞できましたのも、ご指導いただきました浜松医科大学内科学第二講座 須田隆文教授をはじめ本研究に協力いただきました同門の諸先生方に心より感謝申し上げます。
本研究では慢性好酸球性肺炎(CEP)の長期予後、特に再発と呼吸機能低下に関与する因子について検討を行いました。先行のCEP前向き研究において(Eur Respir J 2015; 45: 1624)再発率は50%を超え、CEPの長期管理の重要性を認識したことで本研究の着想に至りました。この受賞を励みに、引き続き日常の疑問や課題を臨床に還元できるように精進していきたいと思います。今後とも皆様からのご指導・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
中村達朗(東京大学大学院農学生命科学研究科放射線動物科学研究室)
「Mast cell-derived PGD2 attenuates anaphylaxis」
受賞理由:申請者は、マスト細胞活性化薬である compound 48/80 の皮内投与による血管透過性亢進、静脈内投与による血圧や体温の低下が、PGD2 合成酵素 (H-PGDS) 欠損マウスで増強されること、マスト細胞に H-PGDS が強く発現していること、マスト細胞特異的に H-PGDS を欠損するマウスにおいても反応が増強されること、さらに、PGD2 受容体 (DP) 欠損マウスで反応が増強すること、DP を介するシグナルが反応を軽減することを示した。これらの成績はマスト細胞由来の PGD2 がアナフィラキシーを軽減する役割を担うことを明快に示すものであり、優れた研究であると評価された。

受賞者のコメント:この度は、第13回アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究を進めるにあたり、村田幸久准教授をはじめとする放射線動物科学研究室のメンバーおよび共同研究者の諸先生方のご指導、ご協力を頂きました。皆様に深く感謝致します。
本研究は、アレルギー性疾患においては「悪玉」としてのイメージが強いプロスタグランジンD2が、アナフィラキシー症状を抑制する役割をもつことを示したものです。今後もプロスタグランジンD2の病態生理学的役割の解明を軸に研究を進め、アレルギー性疾患の病態解明に貢献したいと思っております。この受賞を励みに、基礎研究者としての立場から少しでも臨床に役立つ知見を見出すよう精進致します。
夏目 統(浜松医科大学医学部付属病院小児科)
「アトピー性皮膚炎乳児の鶏卵早期摂取による卵アレルギー発症予防についての無作為化二重盲検比較試験」
     ◆受賞論文:Allergology International Vol.67 No.1掲載
受賞理由:申請者は、乳児期早期からの食物摂取が食物アレルギーを予防する可能性を検討するために、アトピー性皮膚炎乳児を対象に、生後6ヶ月からの鶏卵摂取が生後12ヶ月の時点での鶏卵アレルギーの発症を減少させるかのランダム化比較試験を実施した。その結果、鶏卵アレルギーの発症率やSCORADスコアを始めとする各種パラメーターは、鶏卵摂取群で有意に低下、あるいは改善していた。これらの成績は、今後、乳児期早期からの鶏卵摂取が鶏卵アレルギーの予防法になることを示しており、優れた研究であると評価された。

受賞者のコメント:この度は栄えある第13回アレルギー学会学術大会賞を賜りましたこと、大変光栄に存じます。これまでご指導いただきました大矢幸弘先生、斎藤博久先生(国立成育医療研究センター)、本研究を作り上げて下さった樺島重憲先生(立川相互病院)、金村純子先生(金村産婦人科クリニック)をはじめ、本研究を支えて下さった全ての先生方、スタッフの方々に深く感謝を申し上げます。そして、何よりこの臨床研究に参加してくださった参加者とそのご家族に敬意の念を抱くとともに、感謝申し上げます。
本研究では、乳児期早期から鶏卵を摂取することで卵アレルギーの発症を予防することができる、安全な方法を明らかにすることができました。今後この方法を応用し、食物アレルギー全般の予防に貢献できるよう、この受賞を励みにより一層精進してまいります。今後とも、皆様からのご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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