第15回(2018年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者
第15回日本アレルギー学会学術大会賞は、第67回学術大会において発表された研究業績を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者9名について、2018年11月27日の学術賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、12月14日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。
授賞式は2019年6月14日第68回学術大会時の社員総会にて行われる予定です。
受賞者(敬称略 五十音順)
鈴木 康仁 (福島県立医科大学呼吸器内科) |
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「気管支喘息において喀痰/血清硫化水素比(H2S ratio)は増悪予測指標となりうる」 |
受賞理由:申請者は、喘息の新規バイオマーカー開発の目的で、肺血管平滑筋、気道平滑筋が産生する硫化水素に注目し、ヒト臨床検体を採取し解析した。その結果、硫化水素の喀痰/血清比が、非好酸球性喘息のコントロール状態および増悪予測のための有望なバイオマーカーとなることを明らかにした。喘息治療の個別医療への発展のためには、客観的な指標開発が臨床上重要な課題である。現状では、非好酸球性喘息については有用な指標がなく、本研究は、新たな指標を明らかにした研究として多大な意義を有すると評価された。 |
平井 啓太(静岡県立大学薬学部臨床薬効解析学分野) |
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「喘息患者における増悪発現とNOS2遺伝子多型との関連」 |
受賞理由:申請者らは、NOS2 (CCTTT)n遺伝子多型と喘息患者の増悪発現との関連を明らかにすることを目的として検討を行った。その結果、NOS2 (CCTTT)n遺伝子多型はNOS2 mRNA発現量を変動させることが確認され、11リピート以下のアレルを有することにより喘息患者の増悪発現のリスクが増大する可能性が示された。本研究の結果は、喘息の増悪に関連する危険因子についての重要な知見であり、重症喘息患者の病態評価や治療に反映されるものと考えられ、今後の臨床応用が期待される優れた研究であると評価された。
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三田村 康貴(佐賀大学医学部分子生命科学講座分子医化学分野) |
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「IL-13/ペリオスチン/IL-24経路による アトピー性皮膚炎における表皮バリア破壊機構」 |
受賞理由:アトピー性皮膚炎において、ペリオスチンが表皮角化細胞のフィラグリン発現を低下させることが知られているが、その分子機構は不明であった。申請者らは、マイクロアレイ、およびペリオスチン、STAT6の各欠損マウスを用い、IL-13>ペリオスチン>IL-24>STAT3の経路でフィラグリン発現が低下することを明らかにした。本研究は、アトピー性皮膚炎におけるバリア機能障害の出現機序を分子レベルで明らかにし、今後の治療標的を示した点で優れた研究であると評価された。
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宮田 純(防衛医科大学校 内科学講座(感染症・呼吸器)) |
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「ヒト好酸球のマルチオミクス解析で紐解く、好酸球性副鼻腔炎・重症喘息の分子機序」 |
受賞理由:申請者らは、好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸から好酸球を単離し、刺激後の上清のリピドミクス解析やプロテオーム解析により、鼻茸由来好酸球の脂肪酸代謝異常を見いだした。さらに好酸球から抽出したtotal RNAのトランスクリプトーム解析を行い、脂肪酸やロイコトリエン代謝酵素の発現変化などから、鼻茸由来好酸球の脂肪酸代謝異常には、Type2サイトカインやパターン受容体を介する経路が重要な役割を演じることを見いだした。これらは、好酸球が慢性2型炎症を誘導する機序を理解する上で重要な研究と評価された。
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森脇 昌哉(広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門皮膚科学) |
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「Staphylococcus aureus isolated from atopic dermatitis skin accumulates in lysosome with inducing IL-1α via TLR9 in keratinocytes」 |
受賞理由:トピー性皮膚炎(AD)と黄色ブドウ球菌との関連性については以前から示唆されているが、AD の発症・増悪に対する黄色ブドウ球菌の定着の関与については不明である。申請者は、本研究において黄色ブドウ球菌株の違いによる表皮細胞の反応について解析を行った。その結果、黄色ブドウ球菌AD株はIL-1αの産生を誘導し表皮細胞のリソソーム内に蓄積する特徴を持つことを明らかにした。本研究は、AD 皮膚由来黄色ブドウ菌株が標準株の黄色ブドウ球菌とは異なる性質を持つこと明らかにした。
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