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第18回(2021年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

更新日時:2023年12月5日

第18回(2021年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

第18回日本アレルギー学会学術大会賞は、第70回学術大会において発表された研究業績を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者8名について、2022年2月7日の学術大会賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、3月25日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。

受賞者(敬称略 五十音順) 

           伊藤 圭馬(名古屋市立大学 呼吸器・免疫アレルギー内科学)

      「機能性消化管障害合併重症喘息と気道知覚神経過敏についての後方視的検討」

受賞理由:申請者は重症喘息の一部に機能性消化管障害(FGIDs)が併存することに注目し、気道と消化管の知覚神経過敏が関連しているかについて検討した。吸入カプサイシンによる咳感受性試験ではFGIDsを合併した重症喘息症例で有意に咳感受性亢進が認められたが、GERDとの相関は認めなかった。重症喘息に併存するFGIDsは重症喘息患者のカプサイシン咳感受性の亢進を予測する可能性があり、重症喘息とFGIDsは気道と消化管の知覚神経の相互作用によって病態生理学的に関連している可能性が示唆されたことが高く評価された。
受賞者のコメント:この度は第18回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、誠にありがとうございます。光栄な賞をいただき大変嬉しく思っております。本研究をご指導いただきました名古屋市立大学大学院医学研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学の新実彰男教授、金光禎寛先生、同次世代医療開発学の神谷武教授をはじめ、ご協力いただいた諸先生方に心より感謝申し上げます。近年、カプサイシンによって活性化されるtransient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)や気道の知覚神経リモデリングが喘息の病態に関連していることが報告され、吸入カプサイシンによる咳感受性亢進は重症喘息の重要な病態と考えられています。また機能性ディスペプシアおよび過敏性腸症候群に代表される機能性消化管障害の病態にも、TRPV1や消化管の知覚神経リモデリングの関連が報告されています。本研究では、重症喘息に合併する機能性消化管障害が重症喘息患者のカプサイシン咳感受性亢進を予測し得る可能性、そして両疾患の病態が気道と消化管の神経生理学的メカニズムを介して相関している可能性を示しました。残念ながら、本研究では詳細な機序の解明までには迫れませんでした。新規性と将来性をご評価いただいたものと謙虚に受け止め、本受賞を励みにより一層精進してまいります。引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

           伊藤 尚弘(福井大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター)

     「Ovomucoid-specific IgD increases in children who naturally outgrow egg allergy in a cross-sectional study」

受賞理由:申請者は、鶏卵アレルギー児57名と非鶏卵アレルギー児23名において、オボムコイド及びオボアルブミン特異的IgE、IgG4、IgDを測定し、オボムコイド特異的IgE/IgDの比が、オボムコイド特異的 IgEやオボムコイド特異的 IgG4単独やそれらを組み合わせた指標よりも全卵1/32個相当で症状が誘発される完全除去群を鑑別同定する上で有用であることを明らかにした。本研究は、鶏卵アレルギーにおけるオボムコイド特異的IgD測定の意義を明らかにし、鶏卵アレルギーの治療方針の標準化につながる優れた研究であると評価された。
受賞者のコメント:この度は、第18回日本アレルギー学会学術大会賞を賜りまして、大変光栄に存じます。ご指導いただきました福井大学小児科大嶋勇成教授を始めとする安冨素子先生、村井宏生先生、川崎亜希子先生、共同研究で検体採取にご協力いただいた県内の先生方、ELISA手技のご指導をいただいた実験助手の方々、研究のご理解をいただいた小児科学内の皆様方に深謝申し上げます。本研究は本研究は鶏卵アレルギーのアウトグローの過程において、卵白の摂取状況による抗原特異的IgD値の違いを比較検討しました。その結果、卵白を完全に除去した群ではオボムコイド特異的IgDは他の群よりも有意に低く、オボムコイド特異的IgDに対するオボムコイド特異的IgEの比が他の群との分別に最も有用なマーカーであることを明らかにしました。また、免疫寛容との関連の指摘が報告されているIgG4とIgDが異なる産生パターンを取ることを明らかにし、アウトグローにおけるIgDの新たな可能性について明らかにしました。今回の受賞を励みに、引き続き精進し、アレルギー分野の研究に貢献できれば幸いです。今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒宜しくお願いいたします。

加藤 幸宣(福井大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

                「新規モデルマウスを用いた花粉・食物アレルギー症候群の病態解明」

受賞理由:申請者は、シラカンバ花粉感作による花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)の動物モデルを作成し、リンゴによって口腔アレルギー症候群様症状が誘導されること、そこに好酸球性炎症の介在はないようであるがマスト細胞が関与することを確認した。さらにTSLPあるいはIL-33が関与する可能性を指摘し、これはPFASの病態形成に関する新規の重要な知見と考えられた。本モデルはPFASの病態のさらなる解明と、特に治療の開発にも応用可能であるものと考えられることなどから、受賞に相応しいとの高い評価が与えられたものである。

受賞者のコメント:この度は第18回日本アレルギー学会学術大会賞を賜りまして、大変光栄に存じます。日頃からご指導頂いております藤枝重治先生(福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授)をはじめ、研究に携わって頂いた多くの関係者の方々に深く感謝を申し上げます。花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-Food Allergy Syndrome:PFAS)に関する基礎研究は、他のアレルギー疾患に比べて報告が乏しく、特にモデルマウスを用いた研究報告は存在しませんでした。本研究では、シラカンバ花粉症モデルマウスにリンゴエキスを経口投与することにより、新規PFASモデルマウスを作製しました。更に、様々な遺伝子改変マウスを使用して、PFASの発症機序・病態解明に関する様々な基礎研究を行いました。今回の受賞を励みに、PFASの基礎研究を継続し、病態解明・有効な治療方法の確立に取り組んで参ります。今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

三道 ユウキ(順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器内科)

                  「培養気道上皮細胞と喘息マウスモデルにおけるMAP3K19の役割」

受賞理由:喘息気道リモデリングの病態に関する研究であり、申請者は間質性肺炎で関与が指摘されているMAP3K19について、その好酸球性気道炎症への役割を検討した。培養気道上皮細胞とMAP3K19ノックアウトマウスを用いた喘息モデルにおいて、TWEAKとTGF- bの共刺激によって引き起こされる上皮間葉転換と RANTESの産生をMAP3K19が抑制し、好酸球性気道炎症を抑制する可能性を見出した。臨床的にも意義深く、MAP3K19は喘息治療標的としても期待される。以上より本研究は高く評価された。   
受賞者のコメント:この度は、第18回日本アレルギー学会学術大会賞を賜りまして、誠にありがとうございます。ご指導頂きました順天堂大学呼吸器内科学教室の原田紀宏准教授、高橋和久教授をはじめとした共同研究者の皆様方に厚く御礼申し上げます。本研究の対象でありますMitogen-activated protein kinase kinase kinase(MAP3K19)は、肺に特異的に発現しており、気管支上皮細胞、肺胞上皮細胞、マクロファージに発現を認めると報告されていますが、喘息への関与は不明でありました。本研究ではMAP3K19が喘息およびTumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis (TWEAK)刺激による気道炎症を制御する可能性を初めて明らかにしました。MAP3K19の喘息病態への関与が明らかとなり、今後さらなる病態解明と新たな治療戦略の標的となることが期待されます。今回の受賞を励みに、引き続き精進してアレルギー領域における研究に取り組んで参ります。今後とも皆様からのご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

高橋 秀侑(東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科)

          「好酸球増多疾患患者層別化のための新規EGPA 診断スコアリング(E-CASE スコア)の開発」

受賞理由:申請者の研究は、好酸球増多患者を母集団とした好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPAの識別基準の作成を目的とした。2001 年 2 月―2019 年 9 月に東京大学医学部附属病院を受診した好酸球増多患者 58 例の臨床・検査所見を用いて階層的クラスター分析・主成分分析を実施した。その成績から、好酸球増多疾患患者層別化のための新規EGPA診断スコアリング(E-CASスコア)の開発をした。さらに今後、他施設での有用性の検証および診断カットオフ値の決定をする予定である。そこで、本研究はEGPAの診断に大きく貢献するものであり、高く評価された。
受賞者のコメント:この度は第18回(2021年度)日本アレルギー学会学術大会賞という栄誉ある賞を賜り、大変嬉しく思います。日頃よりご指導いただいております藤尾圭志先生(東京大学アレルギー・リウマチ内科教授)、庄田宏文先生(同准教授)、瀬戸口京吾先生(都立駒込病院膠原病科部長)はもちろんのこと、今回の研究を懇切丁寧にご指導いただいている駒井俊彦先生(東京大学アレルギー・リウマチ内科助教)に深く感謝を申し上げます。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の病態は、主に好酸球性炎症と血管炎から構成され、日常臨床においても好酸球増多症患者の診療の際に鑑別が必要となる疾患です。しかし、EGPA診断の際に参考とされる分類基準はあくまで他の血管炎と識別する目的のものしかこれまで存在せず、他の好酸球増多疾患との識別のために確立された手法はございませんでした。このような背景を踏まえ、本研究では、全身症状を伴う好酸球増多症例を一括してクラスター解析することで、EGPAとその他の好酸球増多疾患の適切な識別点を見出すことを試みました。そしてさらに、そのようにして出てきた識別点をEGPA classification among systemic eosinophilia(E-CASE)スコアという16点満点のスコアリングとして再構成し、このスコアリング がEGPAとその他の好酸球増多疾患の診断識別能を有することを、外部コホートを用いて検証いたしました。このE-CASEスコアが、すでに幅広く使用されている既存のEGPA分類基準にすぐさま取って代わるとは考えておりませんが、上記の経緯から好酸球増多症の中でのEGPAの鑑別には有用だと期待でき、皆様に広くご活用いただけるよう引き続き努めて参ります。今後とも一層のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

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