第18回(2021年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者
第18回日本アレルギー学会学術大会賞は、第70回学術大会において発表された研究業績を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者8名について、2022年2月7日の学術大会賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、3月25日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。
受賞者(敬称略 五十音順)
伊藤 圭馬(名古屋市立大学 呼吸器・免疫アレルギー内科学) |
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「機能性消化管障害合併重症喘息と気道知覚神経過敏についての後方視的検討」 |
受賞理由:申請者は重症喘息の一部に機能性消化管障害(FGIDs)が併存することに注目し、気道と消化管の知覚神経過敏が関連しているかについて検討した。吸入カプサイシンによる咳感受性試験ではFGIDsを合併した重症喘息症例で有意に咳感受性亢進が認められたが、GERDとの相関は認めなかった。重症喘息に併存するFGIDsは重症喘息患者のカプサイシン咳感受性の亢進を予測する可能性があり、重症喘息とFGIDsは気道と消化管の知覚神経の相互作用によって病態生理学的に関連している可能性が示唆されたことが高く評価された。 |
伊藤 尚弘(福井大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター) |
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「Ovomucoid-specific IgD increases in children who naturally outgrow egg allergy in a cross-sectional study」 |
受賞理由:申請者は、鶏卵アレルギー児57名と非鶏卵アレルギー児23名において、オボムコイド及びオボアルブミン特異的IgE、IgG4、IgDを測定し、オボムコイド特異的IgE/IgDの比が、オボムコイド特異的 IgEやオボムコイド特異的 IgG4単独やそれらを組み合わせた指標よりも全卵1/32個相当で症状が誘発される完全除去群を鑑別同定する上で有用であることを明らかにした。本研究は、鶏卵アレルギーにおけるオボムコイド特異的IgD測定の意義を明らかにし、鶏卵アレルギーの治療方針の標準化につながる優れた研究であると評価された。 |
加藤 幸宣(福井大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科) |
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「新規モデルマウスを用いた花粉・食物アレルギー症候群の病態解明」 |
受賞理由:申請者は、シラカンバ花粉感作による花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)の動物モデルを作成し、リンゴによって口腔アレルギー症候群様症状が誘導されること、そこに好酸球性炎症の介在はないようであるがマスト細胞が関与することを確認した。さらにTSLPあるいはIL-33が関与する可能性を指摘し、これはPFASの病態形成に関する新規の重要な知見と考えられた。本モデルはPFASの病態のさらなる解明と、特に治療の開発にも応用可能であるものと考えられることなどから、受賞に相応しいとの高い評価が与えられたものである。 受賞者のコメント:この度は第18回日本アレルギー学会学術大会賞を賜りまして、大変光栄に存じます。日頃からご指導頂いております藤枝重治先生(福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授)をはじめ、研究に携わって頂いた多くの関係者の方々に深く感謝を申し上げます。花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-Food Allergy Syndrome:PFAS)に関する基礎研究は、他のアレルギー疾患に比べて報告が乏しく、特にモデルマウスを用いた研究報告は存在しませんでした。本研究では、シラカンバ花粉症モデルマウスにリンゴエキスを経口投与することにより、新規PFASモデルマウスを作製しました。更に、様々な遺伝子改変マウスを使用して、PFASの発症機序・病態解明に関する様々な基礎研究を行いました。今回の受賞を励みに、PFASの基礎研究を継続し、病態解明・有効な治療方法の確立に取り組んで参ります。今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。 |
三道 ユウキ(順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器内科) |
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「培養気道上皮細胞と喘息マウスモデルにおけるMAP3K19の役割」 |
受賞理由:喘息気道リモデリングの病態に関する研究であり、申請者は間質性肺炎で関与が指摘されているMAP3K19について、その好酸球性気道炎症への役割を検討した。培養気道上皮細胞とMAP3K19ノックアウトマウスを用いた喘息モデルにおいて、TWEAKとTGF- bの共刺激によって引き起こされる上皮間葉転換と RANTESの産生をMAP3K19が抑制し、好酸球性気道炎症を抑制する可能性を見出した。臨床的にも意義深く、MAP3K19は喘息治療標的としても期待される。以上より本研究は高く評価された。 |
高橋 秀侑(東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科) |
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「好酸球増多疾患患者層別化のための新規EGPA 診断スコアリング(E-CASE スコア)の開発」 |
受賞理由:申請者の研究は、好酸球増多患者を母集団とした好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPAの識別基準の作成を目的とした。2001 年 2 月―2019 年 9 月に東京大学医学部附属病院を受診した好酸球増多患者 58 例の臨床・検査所見を用いて階層的クラスター分析・主成分分析を実施した。その成績から、好酸球増多疾患患者層別化のための新規EGPA診断スコアリング(E-CASスコア)の開発をした。さらに今後、他施設での有用性の検証および診断カットオフ値の決定をする予定である。そこで、本研究はEGPAの診断に大きく貢献するものであり、高く評価された。 |
問い合わせ先
一般社団法人日本アレルギー学会事務局
〒110-0005 東京都台東区上野1-13-3MYビル4階
TEL:03-5807-1701 FAX:03-5807-1702
E-Mail:info@jsaweb.jp
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