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第19回(2022年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

更新日時:2023年10月31日

第19回(2022年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

第19回日本アレルギー学会学術大会賞は、第71回学術大会での発表者を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者13名について、学術大会賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、3月17日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。

受賞者(敬称略 五十音順) 

           足立 剛也(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室

 「International funding and evaluation differences impact research in the realm of allergy and immunology」

受賞理由:申請者は、厚生労働省検討協議会メンバーとして、基本法に基づく我が国の「免疫アレルギー疾患研究 10か年戦略」の策定に従事し、レセプト情報・特定健診等情報データベース NDBを活用したアレルギー領域で初めての実態調査を行った。アドレナリン自己注射製剤の処方率、地域差を明らかにし、アレルギー診療の質の向上、均てん化、日本におけるアナフィラキシーの予防戦略の策定への貢献が期待される。また、アトピー性皮膚炎をモデルとして、日本最大の患者登録型クラウドソースアプリ「アトピヨ」の画像・投稿データをもとに教師付き機械学習・自然言語処理を用いた新たなアンメットニーズ解析を進めている。そして、これらの研究の成果を社会へのインパクトも含めて評価するため、世界で初めて、「厚み」指標による長期的影響や論文概要の自然言語解析を組み合わせ、アレルギー領域の研究成果のインパクト解析を行い、本学術集会で発表を行っている。本研究成果をもとに確立された多様な視点による把握・解析・評価の基盤によって、効果的な国際共同研究や長期的な研究戦略の策定への貢献が期待され、本研究は高く評価された。
受賞者のコメント:この度、私が第19回日本アレルギー学会学術大会賞という素晴らしい賞の栄誉に浴する事ができましたことは、望外の喜びとするところであり、学会関係者の皆様には、心から感謝申し上げます。
そして、これまでご指導いただきました慶應義塾大学医学部皮膚科学教室天谷雅行教授には深甚なる謝意を表しますとともに、日本医療研究開発機構 (AMED) 時代からご指摘賜っております西間三謦先生、飯塚一先生、玉利真由美先生には満腔の謝意を表します。また、本研究に対してさまざまなご協力をいただきました諸先生方にも心より感謝申し上げます。
我が国では、1972年の小児ぜんそく治療研究事業を皮切りに、これまで免疫アレルギー疾患に対する対策事業が50年近く推進されてきました。2019年には免疫アレルギー疾患研究10か年戦略が策定され、本研究はその実装に向けた研究成果のインパクト評価を行い、国際比較を基にした日本の研究の強み・潜在性を明らかにしたものであります。
私は今後も、我が国の臨床アレルギー学の歴史を連綿と受け継ぐ素晴らしい先達に少しでも追いつくことができるよう精一杯精進して参る所存でございます。今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

           木口 智之(国立成育医療研究センター アレルギーセンター)

     「青少年の湿疹フェノタイプとアレルゲンコンポーネント感作:成育コホート」

受賞理由:申請者は、一般集団の出生コホート研究から、持続性湿疹の表現型が喘鳴や花粉症などのアレルギー疾患の合併、スギ、イエダニなどの空気中アレルゲンやBet v 1ファミリーへの感作と強く相関することを示し、早期発症持続性湿疹はその後のアレルギーマーチと深く関係していることを明らかにした。本研究は、アレルギーマーチと湿疹の表現系の関係を明らかにし、アレルギーマーチの病態の理解や治療方針の標準化につながる優れた研究であると高く評価された。
受賞者のコメント:この度は第19回日本アレルギー学会学術大会賞を賜りまして、大変光栄に存じます。日頃からご指導頂いております国立成育医療研究センターアレルギーセンター山本貴和子先生、福家辰樹先生、大矢幸弘先生(アレルギーセンターセンター長)をはじめ、研究に携わって頂いた多くの関係者の方々に深く感謝を申し上げます。
本研究では、出生コホート研究である成育コホート研究(T-Child Study)の13歳時までのデータを用いて、一般の思春期児において、湿疹の表現型が、ImmunoCAP ISAC によって測定された IgE コンポーネントの感作パターンにどのように影響するかを検討しました。
その結果、思春期までの持続性湿疹の表現型が、早期寛解するグループおよび遅発性湿疹とのグループと比較して、喘鳴や花粉症、および空気中のアレルゲン(スギ、イエダニ、ティモシー、猫、犬)および交差反応性アレルゲン(Bet v 1ファミリー)の IgE コンポーネント感作と強く関連していることを明らかにしました。
今回の受賞を励みに、引き続きアレルギー領域における臨床と研究に取り組んで参ります。今後とも皆様からのご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

田代 宏樹(佐賀大学医学部附属病院 呼吸器内科)

「肥満を伴った喘息の臨床的特徴とメカニズム」

受賞理由:申請者は、プレバイオティクスである食物繊維のペクチンが腸内細菌叢の変化を誘導し、肺内 IL-17A を介して肥満による好中球性気道炎症増悪や気道過敏性亢進を有意に抑制することを明らかにした。以上から腸内細菌叢自体が肥満による喘息病態増悪に関与し、さらに、治療標的となる可能性を示唆した。またマクロライド系抗菌剤が肥満喘息増悪の抑制に関与する可能性を示した。そこで現在、肥満喘息患者を対象としてアジスロマイシンの多施設共同前向き介入試験を開始している。以上より本研究は肥満喘息の治療に大きく貢献するものであり、高く評価された。

受賞者のコメント:この度は第19回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。今回の臨床研究・基礎研究に関しましてご指導いただきました佐賀大学医学部附属病院荒金尚子先生と、研究の重要さと難しさを親身になってご指導いただき育てていただいた同髙橋浩一郎先生に深く感謝申し上げます。肥満に関連する難治性喘息は通常喘息と異なる病態、特に好中球性気道炎症の関与が考えられる表現型の一つです。そのメカニズム解析および特異的な治療薬を探索することは、現在の喘息難治化におけるブラックボックスであるType 2 lowまたはNon-type 2の難治性喘息の病態解明および特異的な治療薬探索につながると考えられます。現在我々は肥満喘息に対する増悪抑制効果およびそのメカニズムとして腸内細菌叢に着目した新規治療薬の確立ができないか前向き介入試験を行っています。今後とも皆様からのご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

内藤 真依子(大阪大学 呼吸器・免疫内科)

「神経ガイダンス因子セマフォリンによる肺の2型自然リンパ球の機能制御について」

受賞理由:ILC2の機能制御にセマフォリン6D(Sema6D)が関与している事を示している。Sema6D欠失マウスを用いた解析で、定常状態での肺、内臓脂肪、腸間膜において野生型マウスと比較しILC2数の低下とKLRG1やPD-1など活性化マーカーの上昇を認め、骨髄ではILC2の変化を認めなかった為、Sema6D は末梢組織においてILC2の質的・量的保持を行っている事が示されている。細胞外からのSema6D シグナルは ILC2のIL-5、IL-13などの2型サイトカイン産生能を保持し、IL-10産生能を抑制しており、Sema6Dのシグナル欠失はIL-33誘導性肺の急性好酸球性炎症が抑制されることを示した貴重な研究と評価できる。
受賞者のコメント:この度は第19回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究をご指導いただきました大阪大学呼吸器・免疫内科学教室の熊ノ郷淳教授をはじめ、ご協力いただいた諸先生方に心より感謝を申し上げます。2型自然リンパ球(ILC2)は気管支喘息の病態形成に重要な役割を担っており、近年IL-5やIL-13などの2型サイトカインに加えて、抑制性サイトカインであるIL-10も産生することが報告されていますが、抑制性のILC2の制御機構は不明でありました。本研究ではマウス肺の間葉系細胞に発現しているセマフォリン6DがプレキシンA1を介して、ILC2のIL-10産生能を制御していることを明らかにしました。アレルギー疾患に対する舌下免疫療法がヒトILC2のIL-10産生能を亢進させることも報告されており、本研究の知見からILC2の抑制機能を高めるような治療法の開発の可能性が見出されました。今回の受賞を励みに、引き続き精進し研究に取り組んでまいります。今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

馬塲 里英(済生会宇都宮病院 呼吸器内科)

         「喘息患者の末梢血由来2型自然リンパ球のシングルセル解析」

受賞理由:申請者は、画像データによるシングルセル解析(Live cell imaging for secretion activity)を用いてヒト末梢血のILC2を検討した。健常者と比較して、喘息患者ではILC2数が低値で、サイトカイン産生率が高値であり、IL-4Rとその下流シグナルの遺伝子群が有意に亢進していることを示した。本研究により、喘息患者ではIL-4Rを介してILC2が活性化しやすい状態にあることが示唆された。重症喘息に対するオーダーメイド医療の一助となる可能性のある研究であり高く評価された。
受賞者のコメント:この度は、栄えある学術大会賞をいただき、至極光栄に思います。
日々の研究に関してご指導を賜りました慶應義塾大学医学部・呼吸器内科の加畑宏樹先生、福永興壱教授、故・別役智子教授をはじめ、ご協力いただきました関係者の皆様方に深謝申し上げます。
2型自然リンパ球は喘息を含む種々のアレルギー病態に関与していると考えられますが、希少細胞であるため既存の解析方法では性質を評価することが困難であるという課題がございました。我々はLive cell imaging for secretion activity (LCI-S)という独自のシングルセル解析の技術を用いることで、貴重な患者検体から余すことなく情報を得ることに成功いたしました。
まだまだ走り出しの測定技術ではございますが、この研究の趣旨にご賛同いただき、検体を提供してくださった被検者の皆様方にも、あらためて感謝の気持ちを表したいと思います。
今回の受賞を励みに研究をより一層発展し、いつか日々の臨床に役立つ成果を導けるよう、精進してまいります。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

  問い合わせ先

一般社団法人日本アレルギー学会事務局
〒110-0005 東京都台東区上野1-13-3MYビル4階
TEL:03-5807-1701 FAX:03-5807-1702
E-Mail:info@jsaweb.jp

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