第19回(2022年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者
第19回日本アレルギー学会学術大会賞は、第71回学術大会での発表者を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者13名について、学術大会賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、3月17日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。
受賞者(敬称略 五十音順)
足立 剛也(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室) |
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「International funding and evaluation differences impact research in the realm of allergy and immunology」 |
受賞理由:申請者は、厚生労働省検討協議会メンバーとして、基本法に基づく我が国の「免疫アレルギー疾患研究 10か年戦略」の策定に従事し、レセプト情報・特定健診等情報データベース NDBを活用したアレルギー領域で初めての実態調査を行った。アドレナリン自己注射製剤の処方率、地域差を明らかにし、アレルギー診療の質の向上、均てん化、日本におけるアナフィラキシーの予防戦略の策定への貢献が期待される。また、アトピー性皮膚炎をモデルとして、日本最大の患者登録型クラウドソースアプリ「アトピヨ」の画像・投稿データをもとに教師付き機械学習・自然言語処理を用いた新たなアンメットニーズ解析を進めている。そして、これらの研究の成果を社会へのインパクトも含めて評価するため、世界で初めて、「厚み」指標による長期的影響や論文概要の自然言語解析を組み合わせ、アレルギー領域の研究成果のインパクト解析を行い、本学術集会で発表を行っている。本研究成果をもとに確立された多様な視点による把握・解析・評価の基盤によって、効果的な国際共同研究や長期的な研究戦略の策定への貢献が期待され、本研究は高く評価された。 |
木口 智之(国立成育医療研究センター アレルギーセンター) |
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「青少年の湿疹フェノタイプとアレルゲンコンポーネント感作:成育コホート」 |
受賞理由:申請者は、一般集団の出生コホート研究から、持続性湿疹の表現型が喘鳴や花粉症などのアレルギー疾患の合併、スギ、イエダニなどの空気中アレルゲンやBet v 1ファミリーへの感作と強く相関することを示し、早期発症持続性湿疹はその後のアレルギーマーチと深く関係していることを明らかにした。本研究は、アレルギーマーチと湿疹の表現系の関係を明らかにし、アレルギーマーチの病態の理解や治療方針の標準化につながる優れた研究であると高く評価された。 |
田代 宏樹(佐賀大学医学部附属病院 呼吸器内科) |
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「肥満を伴った喘息の臨床的特徴とメカニズム」 |
受賞理由:申請者は、プレバイオティクスである食物繊維のペクチンが腸内細菌叢の変化を誘導し、肺内 IL-17A を介して肥満による好中球性気道炎症増悪や気道過敏性亢進を有意に抑制することを明らかにした。以上から腸内細菌叢自体が肥満による喘息病態増悪に関与し、さらに、治療標的となる可能性を示唆した。またマクロライド系抗菌剤が肥満喘息増悪の抑制に関与する可能性を示した。そこで現在、肥満喘息患者を対象としてアジスロマイシンの多施設共同前向き介入試験を開始している。以上より本研究は肥満喘息の治療に大きく貢献するものであり、高く評価された。 受賞者のコメント:この度は第19回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り、大変光栄に存じます。今回の臨床研究・基礎研究に関しましてご指導いただきました佐賀大学医学部附属病院荒金尚子先生と、研究の重要さと難しさを親身になってご指導いただき育てていただいた同髙橋浩一郎先生に深く感謝申し上げます。肥満に関連する難治性喘息は通常喘息と異なる病態、特に好中球性気道炎症の関与が考えられる表現型の一つです。そのメカニズム解析および特異的な治療薬を探索することは、現在の喘息難治化におけるブラックボックスであるType 2 lowまたはNon-type 2の難治性喘息の病態解明および特異的な治療薬探索につながると考えられます。現在我々は肥満喘息に対する増悪抑制効果およびそのメカニズムとして腸内細菌叢に着目した新規治療薬の確立ができないか前向き介入試験を行っています。今後とも皆様からのご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。 |
内藤 真依子(大阪大学 呼吸器・免疫内科) |
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「神経ガイダンス因子セマフォリンによる肺の2型自然リンパ球の機能制御について」 |
受賞理由:ILC2の機能制御にセマフォリン6D(Sema6D)が関与している事を示している。Sema6D欠失マウスを用いた解析で、定常状態での肺、内臓脂肪、腸間膜において野生型マウスと比較しILC2数の低下とKLRG1やPD-1など活性化マーカーの上昇を認め、骨髄ではILC2の変化を認めなかった為、Sema6D は末梢組織においてILC2の質的・量的保持を行っている事が示されている。細胞外からのSema6D シグナルは ILC2のIL-5、IL-13などの2型サイトカイン産生能を保持し、IL-10産生能を抑制しており、Sema6Dのシグナル欠失はIL-33誘導性肺の急性好酸球性炎症が抑制されることを示した貴重な研究と評価できる。 |
馬塲 里英(済生会宇都宮病院 呼吸器内科) |
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「喘息患者の末梢血由来2型自然リンパ球のシングルセル解析」 |
受賞理由:申請者は、画像データによるシングルセル解析(Live cell imaging for secretion activity)を用いてヒト末梢血のILC2を検討した。健常者と比較して、喘息患者ではILC2数が低値で、サイトカイン産生率が高値であり、IL-4Rとその下流シグナルの遺伝子群が有意に亢進していることを示した。本研究により、喘息患者ではIL-4Rを介してILC2が活性化しやすい状態にあることが示唆された。重症喘息に対するオーダーメイド医療の一助となる可能性のある研究であり高く評価された。 |
問い合わせ先
一般社団法人日本アレルギー学会事務局
〒110-0005 東京都台東区上野1-13-3MYビル4階
TEL:03-5807-1701 FAX:03-5807-1702
E-Mail:info@jsaweb.jp
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