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第20回(2023年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

更新日時:2024年10月21日

第20回(2023年度)日本アレルギー学会学術大会賞受賞者

第20回日本アレルギー学会学術大会賞は、第72回学術大会での発表者を対象として、学会誌および学会ホームページにて公募、応募者19名について、学術大会賞選考委員会にて選考を行い、受賞候補者5名を選出、7月24日の理事会において下記のとおり受賞者を決定しました。

受賞者(敬称略 五十音順) 

           岡 愛子(国際医療福祉大学 耳鼻咽喉科

 アレルゲン免疫療法の治療効果を増強する口腔内細菌の同定と機能解析

受賞理由:アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法(SLIT)における治療効果と関連をプレボテラ属細菌のIL-10 産生誘導能を解析し,本細菌を用いたSLIT アジュバント開発が可能か検討した研究である.単球系のTHP-1 細胞と,ヒト末梢血単核細胞にプレボテラ属細菌を添加し,IL-10 産生誘導が起こるかを検討し,結果としてTHP-1 細胞,PBMC とも,添加したプレボテラ属細菌の菌量依存的にIL-10 産生誘導が認められている.この結果よりIL-10 産生を誘導する構成成分が特定されれば,SLIT の有効性を向上させるアジ ュバント開発へと繋がることが示され受賞に値する研究と判断できる.

受賞者のコメント:この度は第20回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り,大変光栄に存じます.本研究を含め多くの基礎・臨床研究に関わらせていただき,ご指導いただいている国際医療福祉大学耳鼻咽喉科の岡野光博先生を始め,ご支援いただきました皆様方に心より感謝申し上げます.
本研究では口腔内細菌叢がアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の治療効果に関与する可能性があるという仮説から,細菌組成率と治療効果の関連を検討しました.口腔内常在菌のプレボテラ属細菌が舌下免疫療法有効群で組成率が高いことがわかり,アジュバント効果を持つ可能性が示唆されました.今後は炎症抑制の機序を探索していく実験を検討しています.
今回の受賞を励みとして,患者さんや社会へ還元できるよう,引き続きアレルギー分野での研究に取り組んで参ります.今後とも皆様からのご指導,ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます.

           木村 芽以子(順天堂大学医学部附属浦安病院眼科/順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター)

     「The sensory nervous system mediates induction of goblet cell-associated antigen passage stimulated by particulate matters」

受賞理由:アレルギー性結膜炎は増加しており,申請者は今までに,アレルギー性結膜炎の局所感作モデルを考案し,ブタクサ花粉による感作機序を解明している.今回の研究では,結膜のゴブレットセルによる抗原取り込みや除去作用について探究し,ムチンにシアル酸を付加する酵素の一つであるSt6galnac1 酵素が関与していることを突き止めた.粘液によって花粉粒子を除去するはずのゴブレットセルが,実は抗原通過にも関与していることを明らかにした興味深い研究であり,高く評価された.

受賞者のコメント:この度は,栄えある第20回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り,大変光栄に存じます.
本研究に関して親身に手厚くご指導いただきました順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター教授北浦次郎先生・同准教授安藤智暁先生,眼アレルギーの世界に導いてくださった順天堂大学医学部附属浦安病院眼科教授海老原伸行先生をはじめ,ご協力いただいた先生方に心より感謝申しあげます.
我々はアレルギー性結膜炎における花粉の殻の役割について研究を重ねてきました.これまでバリア機能の破綻を契機にした受動的な抗原の侵入がアレルギー性結膜炎の発症に重要であると考えられてきましたが,花粉の殻や黄砂やPM10といった飛散粒子が,神経系,特に三叉神経を介して杯細胞を活性化し,goblet cell associated antigen passage (GAP)形成を誘導することで,能動的に,かつ速やかに抗原を取り込むメカニズムを明らかにしました.
今回の受賞を励みに,結膜GAPについて研究を発展させていき,臨床に役立つ成果を導けるよう精進して参ります.今後とも皆様からのご指導ご鞭撻のほど,よろしくお願い申しあげます.

 

溜 雅人(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部)

「末梢感覚神経による皮膚と肺での炎症感知(sensing inflammation)」

受賞理由:申請者は,肺の末梢神経におけるJAK1 シグナリングが喘息様気道炎症に対して抑制的に制御することと,末梢感覚神経によるアレルギー性炎症制御メカニズムが皮膚と肺では異なることを明らかにした.この研究結果は,組織特異的な働きを有するJAK 分子を標的とした治療の開発が,将来のアレルギーをはじめとした炎症性疾患の治療に結びつくことを示唆している.末梢感覚神経と免疫細胞との作用による免疫制御機構の一端を明らかにした優れた研究であり,高く評価された.

受賞者のコメント:この度は第20回日本アレルギー学会学術大会賞という栄誉ある素晴らしい賞を賜り,大変光栄に存じます.また,同時に身の引き締まる思いがいたします.海老澤元宏理事長をはじめ,学会関係者の皆様には心より感謝申し上げます.
そして,大学院生の頃からこれまで絶えず温かいご指導を賜っている国立成育医療研究センター研究所の松本健治先生(免疫アレルギー・感染研究部)と森田英明先生(免疫アレルギー・感染研究部,アレルギーセンター)に深く感謝申し上げます.さらに,研究に集中して取り組めるようにご配慮下さった東京慈恵会医科大学小児科学講座の井田博幸先生と大石公彦先生に心より感謝申し上げます.また,本研究に対してさまざまなご協力をいただきました方々にも深く感謝申し上げます.
近年,炎症制御という文脈において,組織を神経支配する末梢感覚神経がサイトカイン受容体などを介して炎症を感知し,神経ペプチドや神経伝達物質の放出を介して直接免疫細胞の働きを制御していることが明らかになってきました.2型炎症に関わるInterleukin-4は受容体に結合後,Janus kinase 1(JAK1)を介してシグナルを伝達しますが,アトピー性皮膚炎においては末梢感覚神経のJAK1が痒みのシグナルを伝達に関わり,掻破行動を引き起こすことでアトピー性皮膚炎を増悪させます.一方で,私たちの研究では肺を神経支配する末梢感覚神経のJAK1がCGRPβという神経ペプチドの放出を介して2型自然リンパ球を抑制的に制御することで,気管支喘息に保護的に働くことを見出しました.このことは,臓器によって末梢感覚神経JAK1の2型炎症制御における役割が異なり,対象臓器によって治療の有効性などが異なることを示唆しています.
今回の受賞を励みに,臓器特異的な末梢神経系による2型炎症制御のメカニズムを一層明らかにしていくことで,疾患対象臓器ごとの新規治療法や予防法の開発に結びつけることができるよう邁進して参りたいと存じます.
今後ともご指導・ご鞭撻の程を何卒よろしくお願い申し上げます.

彭 戈(順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター)

「Keratinocyte autophagy deficiency contributes to itch-related scratching in atopic dermatitis」

受賞理由:申請者は,ケラチノサイトのオートファジーがアトピー性皮膚炎(AD)のかゆみ行動に及ぼす影響を評価するため,ケラチノサイト特異的オートファジーノックアウトマウスを用いて,かゆみの制御におけるオートファジーの役割を検討した.ケラチノサイトのオートファジーがかゆみを抑制する機能を有し,ADのかゆみの病態に関与してすることを明らかにした.さらに,ラパマイシンやヒトβ-ディフェンシン-3などのオートファジー活性化因子が,ADのかゆみと炎症の制御に有用であることを明らかにしたことから,ADの治療戦略につながる優れた研究であると高く評価された.

受賞者のコメント:この度は,第20回日本アレルギー学会学術大会賞を受賞させていただき,大変光栄に存じます.今回の受賞は,私がこれまで取り組んできたアトピー性皮膚炎の研究が評価された結果であり,これまで支えてくださった小川秀興理事長,奥村康センター長,ニヨンサバ フランソワ教授,池田志斈教授,小松雅明教授,そしてアトピー疾患研究センターの皆様方の変らぬご支援に心から感謝申し上げます.
私の研究は,アトピー性皮膚炎の発症機序の解明と新規治療法の開発に焦点を当てており,特にオートファジーと抗菌ペプチドの役割に注目しています.これらの研究は,アトピー性皮膚炎だけでなく,関連する他の皮膚疾患に対しても新たな治療の可能性を示唆しています.今後も,この研究をさらに発展させ,より多くの患者さんに貢献できるよう努めてまいります.
最後に,このような栄誉ある賞をいただいたことに改めて感謝申し上げるとともに,引き続き精進していく所存です.

本田 大介(千葉大学医学部附属病院腎臓内科)

         「遺伝性血管性浮腫の急性発作時におけるFDP/D-dimer比の意義」

受賞理由:遺伝性血管性浮腫(HAE)はC1 インヒビター(C1-INH)の遺伝的欠損により発作性浮腫をきたす疾患であるが,凝固線溶系の異常もきたすため血栓性疾患と誤診されることがある.申請者は,HAEの急性発作時にFDP/D-dimer比が著明に上昇することを示し,一次線溶の相対的亢進を示唆するとともに,HAEの急性発作時における FDP/D-dimer 比は,血栓性疾患とHAEの鑑別に有用であることを明らかにした.本研究は,HAEの病態の理解や早期診断につながる優れた研究であると高く評価された.

受賞者のコメント:この度は,第20回日本アレルギー学会学術大会賞を賜り,誠にありがとうございます.このような光栄な賞を頂き,大変嬉しく思っております.選考して下さった学会選考委員会の先生方,スムーズな手続きをサポートして下さった学会事務局の方々をはじめ,学会関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます.また,長きにわたり御指導頂いております医療法人社団松和会理事長富野康日己先生,医療法人埼友会埼友草加病院長大澤勲先生,千葉大学大学院医学研究院腎臓内科学教授淺沼克彦先生,共同研究者である国立循環器病研究センター名誉研究員宮田敏行先生,愛知医科大学救急集中治療医学講座准教授尾崎将之先生に心より感謝申し上げます.受賞研究対象疾患である遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema: HAE)は,時に致死的となるものの,疾患認知度や診断率が低く,疫学調査や病態解明が十分になされておらず,まだまだ不明な点が多い疾患です.本賞受賞を機に,HAEの疾患認知度と診断率の向上,さらなる治療環境の改善を目指し,臨床・基礎研究活動に励みたいと思います.今後とも,皆様方のより一層の御指導を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.

 

 

  問い合わせ先

一般社団法人日本アレルギー学会事務局
〒110-0005 東京都台東区上野1-13-3MYビル4階
TEL:03-5807-1701 FAX:03-5807-1702
E-Mail:info@jsaweb.jp

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