薬物アレルギーとは、ある特定の薬物に対する過剰な免疫反応のことで、それによって自らの体を傷つけてしまいます。薬物アレルギーの多くは内服薬や注射薬によって起こりますが、湿布や塗り薬、目薬、吸入薬なども原因になります。
症状
原因の薬剤を中止すればすぐに治る軽いものから、高熱、全身の皮膚や粘膜の症状が広がって、肝臓や腎臓などの他の臓器障害にも及ぶ重いものまであります。
重症薬疹 - アレルギーポータル(allergyportal.jp)。
薬剤アレルギーのうち、皮膚症状がある場合を「薬疹」といいます。
アナフィラキシーショックが起こるタイプや、同じ部位に症状が起こるタイプ(固定薬疹)、外用薬や貼付薬によるアレルギー性接触皮膚炎が起こるタイプもあります。
重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤による接触皮膚炎(厚生労働省)(pmda.go.jp)。
重症薬疹
生命に関わる重症の薬疹とされているものに、中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群、薬剤性過敏症症候群があります。これらの重症薬疹では、原因の薬を中止しただけでは改善せず、高熱や肝障害などの臓器障害を伴うことが多く、早く対応することが重要です。
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中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群
目や唇、口の中の粘膜の発赤、水ぶくれ、ただれが生じます。これらの疾患の後遺症として失明などの視力障害などの目の障害や呼吸器障害がみられることがあります。
- 中毒性表皮壊死症について詳細はこちら
薬疹(重症)Q1 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)(dermatol.or.jp) - 重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)
000218909.pdf(pmda.go.jp) - スティーブンス・ジョンソン症候群について詳細はこちら
薬疹(重症)Q2 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)(dermatol.or.jp) - 重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)
000218908.pdf(pmda.go.jp)
薬剤性過敏症症候群
薬のほかにウイルス感染が関係する病気です。ほとんどの症例において体内に潜伏感染しているヒト6型ヘルペスウイルス(HHV-6)などのヘルペスウイルス科のウイルスの再活性化がみられ、いろいろな臓器に障害が起こります。
- 薬剤性過敏症症候群について詳細はこちら
薬疹(重症)Q3 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)(dermatol.or.jp) - 重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)
000146073.pdf(pmda.go.jp)
検査
原因薬物を特定する検査として、血液検査、皮膚テスト、再投与試験があります。
じんましん、アナフィラキシーのタイプでは、皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト)、それら以外の薬疹ではパッチテスト、血液検査の薬剤リンパ球刺激試験(DLST)があります。最も確実な診断方法は再投与試験ですが、再投与により症状が再びあらわれ、重い症状が誘発される恐れがあります。
そのため、初めに安全な検査を行うことが一般的です。再投与試験以外の検査は、薬剤によって陽性率が異なり、陰性であっても原因薬剤を否定できない点に注意が必要です。したがって、専門医のもとで、総合的に判断されることが重要です。
治療
治療の原則は、原因薬物を見つけ出し、それを中止して、服薬を避けることです。一度アレルギーが起こった薬剤が再び投与されると、初回よりも重症化する恐れがあります。原因となっている薬を中止した上で、重症度に応じて、ステロイド外用薬または内服薬・点滴薬などによる治療が行われます。
医薬品副作用被害救済制度があります。
医薬品は正しく使っていても、副作用の発生を防げない場合があります。そこで、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などの給付を行う公的な制度です。
医薬品副作用被害救済制度(pmda.go.jp)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構より引用
Q&A
- 薬物アレルギーの症状にはどのようなものがありますか?
- 薬物アレルギーではさまざまな症状があらわれますが、最もよくみられるのが皮膚症状です。ほかにも呼吸器障害〔ぜん息急性増悪(発作)や肺炎など〕があらわれたり、検査によって肝障害、腎障害、血液障害(貧血、好酸球増多、白血球数異常、血小板減少)が見つかることもあります。
- どのような薬剤アレルギーに注意したらいいですか?
- 薬物アレルギーのなかでも生命を脅かす重篤なのが、アナフィラキシーと重症薬疹です。
アナフィラキシーは、全身に起こる即時型アレルギー反応で、薬剤が投与されてすぐに、体のかゆみや赤み、じんましん、鼻水、ぜん息急性増悪(発作)、腹痛、下痢、嘔吐などが分単位であらわれ、血圧が下がり、呼吸困難に陥り意識を失うこともあります。
アナフィラキシー
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重症薬疹 - アレルギーポータル(allergyportal.jp)
- 薬物アレルギーを起こしやすい薬はありますか?
- 抗菌薬や解熱鎮痛薬、かぜ薬(感冒薬)、抗痙攣薬、痛風治療薬などは、薬物アレルギーの原因になることが他の薬より多く、また重症薬疹の原因になることもあります。
- 塗り薬や目薬のアレルギーはありますか?
- 塗り薬や目薬、湿布などを使用したところに、かゆみや赤みがあらわれることがあり、薬剤アレルギーにより、かぶれ(接触皮膚炎)が起こることがあります。パッチテストを行って、原因の薬を調べます。
薬剤の接触皮膚炎について詳細はこちら
重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤による接触皮膚炎(厚生労働省)(pmda.go.jp)