職場に関連する物質に接することにより、それが原因となり発症する喘息のことです。
成人になって診断された喘息の患者さんの10~15%程度いるといわれています。
原因
職業性喘息には職場の抗原(アレルギー物質)に一定の期間接触することでアレルギーを獲得する「感作物質誘発職業性喘息」と、職場で刺激性の物質を一度に多量に吸入したために発症する「刺激物質誘発性喘息」があります。
職場で扱うさまざまな物質が原因となります。
塗装業、パンや麺製造業、看護師、化学物質を扱う仕事、動物や植物を扱う仕事、溶接業、食品加工業、木材加工業などで有病率が高いと報告されています。
原因 Q&A
- どんな職業の人に多いですか?
- 職種によって異なりますが、カニ加工業者、パン製造業者・麺製造業者、看護師、生花業者、動物を扱う仕事、溶接業者、ラテックス使用医療従事者に職業性喘息の発症頻度が高いと報告されています。
- アレルギー反応なのでしょうか?
- 刺激性の物質を一度に多量に吸入したため発症する刺激物質誘発性のものと、 タンパク質や高分子物質、化学物質などの低分子量物質に感作されることで、発症するアレルギー性の喘息があります。原因物質への高濃度・高頻度の曝露、アトピー性疾患の合併、喫煙がリスク因子です。
診断
喘息の診断を行います。
成人のぜん息 - 診断
職場と関連して、喘息症状の悪化があるかどうか、詳細な問診を行います。
また、仕事の日と休日に一日4回ピークフローを測定し、症状を記録します。
成人のぜん息 - 自己管理・喘息日記とピークフロー測定
必要があれば、原因物質を吸入して、喘息症状が出現するかどうかを調べる「吸入誘発試験」、または「環境誘発試験」を行うこともあります。
血液検査
疑わしいアレルゲンの特異的IgE抗体の量を調べます。
プリックテスト
原因として疑われるものを専用の針につけて少し皮膚に押しつける、という検査です。押しつけた部分が虫刺されのように膨らむかどうかを調べます。
診断 Q&A
- 喘息と診断されましたが、休日や出張先では症状が落ち着いています。職場に原因があるのでしょうか?
- 特定の環境下で症状が悪化する場合には、職業性喘息が疑われます。主治医の先生には、職場で扱っている物質、曝露の予防対策の有無を伝えてください。「喘息日記」を記録することで診断につながることもあります。
喘息日記とピークフロー測定について詳しい情報はこちら
- 血液検査を勧められました。
原因物質がわかるのでしょうか? - 特異的IgE抗体の測定は感作物質誘発職業性喘息の診断に重要です。
しかし、高分子物質が原因の場合は陽性となりますが、無機質や低分子物質の場合は陽性となりにくいことに注意が必要です。
対策
職業と関連している症状の場合、事業所の産業医または安全衛生担当者に連絡し、アレルギー専門医に相談してください。
原因を回避・除去するための対応をとります。作業内容の変更が難しい場合、マスクの使用、換気の改善などの環境整備措置を行います。
喘息の治療を継続することが治療の中心となります。
職場で喘息の急性増悪(発作)が起きた場合の対策をあらかじめ主治医と相談し、決めておきましょう。
原因物質との接触を回避しても、喘息の症状は2年ほど続くため、通院は続けてください。
対策 Q&A
- 職業性喘息と診断されました。
仕事を続けられないのでしょうか? - 感作物質誘発性の場合は、職場の変更などで曝露を完全回避する必要があります。社会的、経済的な面で不可能な場合には、職場環境整備やマスクの使用などで原因物質への曝露を極力減らすことで対応します。
刺激物質誘発性の場合は環境整備により刺激物質への曝露を減らすことで同じ業務を継続することが可能です。職場の産業医などの担当者に相談しましょう。
- 職場の環境整備を行ったのですが、喘息の治療は続けたほうがいいですか?
- 感作物質誘発性の場合、感作曝露を回避しても 喘息の特徴である気道の過敏性は2年以上持続するため、回避後も2年間は通院して、経過の観察を行いましょう。