何らかのアレルゲンなどの侵入により、複数の臓器に急速に強い症状が現れる状態がアナフィラキシーです。血圧が低下して意識が低下するような場合をアナフィラキシーショックとよび、生命に関わる重篤な状態です。
原因
アレルギー疾患の患者数について
日本ではアナフィラキシーを発症したことがある児童生徒の割合は、小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%であり、低年齢ほど多い傾向があります。
アナフィラキシーガイドライン2022 総論5 誘因より引用
誘因について
日本におけるアナフィラキシーの誘因は、食物が最も多く約7割を占めています。以降、医薬品、FDEIA、昆虫刺傷と続きます。
- FDEIA:特定の食物摂取後に運動することで誘発されるアナフィラキシー
- OIT(経口免疫療法):微量の原因食品を摂取し続けることで原因食品を食べることができるようになる治療法
調査対象施設:日本アレルギー学会認定教育施設 調査期間:2015年2月~2017年10月、集積症例数 767名
アナフィラキシーガイドライン2022 総論5 誘因より引用
誘因の詳細について
- 食物では牛乳、鶏卵、小麦および落花生(ピーナッツ)に由来することが多いです。
- 昆虫刺傷の原因は主にハチ類です。
- 医薬品と昆虫刺傷では症状が重く出る傾向があります。
アナフィラキシーガイドライン2022 総論5 誘因より引用
症状
皮膚が赤くなったり、息苦しくなったり、嘔吐を繰り返したりなどの複数の症状が同時に急激に進みます。最も注意すべき症状は、血圧が低下し、ぐったりしてぼーっとするなど、意識もうろうになった状態です。このような状態はアナフィラキシーショックに陥っている可能性が高く、迅速に対応しないと命にかかわることがあります。
皮膚症状 | かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、湿疹 など |
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呼吸器症状 | くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ、ぜーぜー、ひゅーひゅー(ぜん鳴)など |
粘膜症状 | 目の充血や腫れ、涙、かゆみなど、口の中や唇、舌の違和感、腫れ など |
消化器症状 | 下痢、吐き気・嘔吐、血便 など |
神経症状 | 頭痛、元気喪失、意識もうろう など |
全身症状 | アナフィラキシー、アナフィラキシーショック など |
アレルギーポータル アナフィラキシー3、アナフィラキシーの症状より引用
https://allergyportal.jp/provision/anaphylaxis/
アナフィラキシーの重症度分類について
- アナフィラキシーの重症度(グレード)判定は下記の表を参考にします。
- 最も高い重症度を示す器官の重症度を用いて判定します。
アナフィラキシーガイドライン2022 総論5 誘因より引用
治療
初期対応について
- アナフィラキシーを疑う場合には、初期対応が最も重要です。
- 原則として患者さんを仰臥位(あおむけ)にして処置を行いますが、呼吸困難を認める場合は座位、意識消失の場合は回復体位(横向き)にします。
- だんだん元気がなくなっていくように見える意識障害を認める場合には、呼吸や心拍が遅くなっていないか、皮膚の色が赤くなっていないかなどを確認しながら、必要に応じて一次救命措置を行い、医療機関への搬送手配を急ぎます。
アレルギーポータル アナフィラキシー4、アナフィラキシーの治療より引用
https://allergyportal.jp/provision/anaphylaxis/
薬物治療について
- アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合には、アドレナリンの筋肉注射を行います。
- 携帯用のアドレナリン注射製剤はアナフィラキシー時に使用し、医療機関で治療を受けるまでの補助的な薬剤です。
- アドレナリンは太ももの前外側の筋肉に注射します。
- いつでもアドレナリンを使用できるように、日頃からアドレナリン注射の練習や適切な管理などを行なっておく必要があります。
Q&A
- アナフィラキシーの原因には何がありますか?
- 食物や医薬品、ハチなどの昆虫による刺傷などがあります。詳細は上記「原因」を参照ください。携帯用のアドレナリン注射製剤を使用された症例では、原因はハチ類が最も多く、続いて食物の小麦、乳製品、卵の順です。
- 食物アレルギーによる症状には、どのようなものがありますか?
- 約90%に皮膚症状が、約30%に呼吸器症状や粘膜症状があらわれます。食後2時間以内にあらわれることが多く、複数の臓器に症状があらわれた状態をアナフィラキシーと呼びます。さらに血圧低下や意識障害を伴った状態をアナフィラキシーショックと呼びます。アナフィラキシーやアナフィラキシーショックは生命に関わる危険な状態であり、アドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)の使用や救急搬送など迅速な対応が求められます。
- 引っ越しをしたのですが、どこの病院でアレルギーを診てもらえるかがわかりません。
- 各都道府県ではアレルギー疾患拠点病院が設置されてきています。アレルギーポータルにて各都道府県の拠点病院を調べることができます。また、日本アレルギー学会の検索サイトでは、ご自宅から近い場所や通院しやすい場所のアレルギー専門医を検索することが可能です。