ぜん息は、呼吸をするときの空気の通り道(気道)がアレルギー性の炎症のために狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。代表的な症状はぜん鳴(ぜんめい:「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった呼吸の音)ですが、乳幼児では泣いたり不機嫌になったりすることで苦しさを伝える場合があります。
現状
発症年齢について
小児のぜん息の発症は乳幼児期が多く、以降は緩やかに減っていきます。以前は2~3歳がピークでしたが、最近のデータでは0歳で最も多くぜん息と診断されており、発症がより早くなっています。
ぜん息の発症年齢
小児気管支喘息ガイドライン2023 第3章、疫学より引用 https://kk-kyowa-digitalpublishing.meclib.jp/2023jpgl/book/index.html#target/page_no=53
小児のぜん息死亡について
小児のぜん息死亡数は1970~2000年頃までは年間100人以上でしたが、近年は1ケタまで減少しています。日本の小児ぜん息死亡率は世界で最も低い群に属しています。
年齢階級別喘息死亡率の推移
小児気管支喘息ガイドライン2023 第3章、疫学より引用 https://kk-kyowa-digitalpublishing.meclib.jp/2023jpgl/book/index.html#target/page_no=53
症状
小児のぜん息では以下のような特徴があります
- 泣いたり不機嫌になったりすることが多くなる
- かぜをひくたびに咳が続く
- 呼吸するときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音が出る
- 遊びまわって遊んだあとに咳が出始める
- 夜間や早朝に苦しそうに咳をする
アレルギーポータル アレルギーについて 小児のぜん息より引用
https://allergyportal.jp/knowledge/childhood-asthma/
重症度について
ぜん息の重症度は、ぜん息症状のあらわれる頻度とその強さで分類します。ぜん息の重症度に応じて治療内容を決めるため、重症度の評価はとても重要です。重症度の評価のためには、発作強度(小発作、中発作、大発作、呼吸不全)を正確に判定しておく必要があります。
間欠型 | 軽い症状が年に数回生じる程度で、呼吸が苦しくなっても薬で治り、短期間で症状が改善し、持続しない状態です |
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軽症持続型 | 軽い症状が月1回以上、週1回未満で、症状の持続は短い状態です |
中等症持続型 | 軽い症状が週1回以上、毎日ではなく、時に中・大発作となる状態です |
重症持続型 | 毎日症状があり、週1、2回は大発作がある状態です(それ以上は最重症持続型) |
注) すでに喘息の治療を行っている場合には、治療内容を考慮して判断されます。
アレルギーポータル アレルギーについて 小児のぜん息より引用
https://allergyportal.jp/knowledge/childhood-asthma/
予防
ぜん息治療の3本柱について
ぜん息治療のためには、まずぜん息について理解する必要があります。その上で、以下の3つを実践します。
- ぜん息を悪くする原因を減らす
- 気道の炎症を抑えるために薬を使う
- ぜん息の急性増悪(発作)が起こりにくくなるように体力をつける
(適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活など)
子どものぜん息ハンドブック 第2章 ぜん息ってどうな病気?より引用
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_28016_1.pdf
長期管理薬について
ぜん息の薬には、ぜん息発作を起こさないように予防する長期管理薬(コントローラー)と、ぜん息急性増悪(発作)のときに使う薬(リリーバー)があります。普段の治療である長期管理にはコントローラーをきちんと使うことが大切です。
子どものぜん息ハンドブック 第7章 ぜん息の治療より引用
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf
年齢別小児喘息の長期管理プランについて
- 長期管理プランは乳幼児(5歳以下)と6~15歳の2つの年齢に分けて選択します。
- 治療には、内服薬、吸入薬、貼付薬および皮下注射薬などがあります。
- 重症度が増すにつれて、治療ステップが上がっていきます。
小児ぜん息治療ガイドライン 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020 第7章ぜん息の治療より引用
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf
こちらもご参照ください
小児気管支喘息ガイドライン2023 第5章、長期管理
https://kk-kyowa-digitalpublishing.meclib.jp/2023jpgl/book/index.html#target/page_no=102
Q&A
- かぜをひくたびに咳が長引くのですが、ぜん息でしょうか?
- かぜをひくたびに咳が長引く場合にはぜん息の可能性がありますが、鼻副鼻腔炎(黄色や緑色のねばっとした鼻汁が出る)や胃食道逆流(食後に動くと咳がひどくなる)などの病気でも咳が長引くことがありますので、医師の診察を受けてください。
- 毎日吸入ステロイド薬を使用していますが大丈夫でしょうか?
- 吸入ステロイド薬は、内服のステロイド薬と異なり、副作用がきわめて少なく、医師が指示する量を守って使用すれば、長期間使用しても安全な薬です。吸入ステロイド薬は、毎日使用することで十分な効果が得られる薬です。ある程度以上の量の吸入ステロイド薬を半年以上続けると、成人になったときの身長が約1cm小さくなることも報告されていますが、急性増悪(発作)を繰り返すこと自体も成長に影響します。このため、治療では早めに症状をコントロールして、吸入ステロイド薬の用量を減らすことを心がけます。
- ぜん息の薬ですが、しばらく発作が起こっていないのでぜん息の薬を中止しても良いですか?
- ご自分の判断で薬を中止することは避けて、主治医に相談してください。ぜん息では、自覚症状がないときでも、気道の炎症は続いています。ぜん息の症状がない状態が維持できているのは、長期管理薬によって炎症がコントロールできているからです。薬物治療だけでなく、環境の整備や運動などの日常生活の管理にも、引き続き取り組んでいただくことをおすすめします。