一般社団法人 日本アレルギー学会

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ピーナッツアレルギー発症予防に関するコンセンサスステートメント

更新日時:2015年6月10日

各位

                                      日本アレルギー学会理事長   斎藤 博久
                                      日本アレルギー学会常務理事  海老澤元宏

ピーナッツアレルギー発症予防に関するコンセンサスステートメント -
Consensus Communication on Early Peanut Introduction and the Prevention of Peanut Allergy in High-Risk Infants - が発表されました。これは、日本アレルギー学会を含む世界の10の学会による声明です。以下に英文全文をご案内致しますのでご覧下さい。


 Consensus Communication on Early Peanut Introduction and the Prevention of Peanut Allergy in High-Risk Infants

以下は、日本語要約文と注釈です。併せてご参照下さるようお願い致します。                          
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ピーナッツアレルギー発症予防に関する日本アレルギー学会を含む世界の10の学会によるコンセンサスステートメント【要約】

ピーナッツアレルギーは先進国の1~3%の子供達に認められ、世界的に増加し続ける大変厄介な健康問題となっています。様々な調査手法が用いられ、症例数の推定は調査毎に異なるものの、この10~15年でピーナッツアレルギーの患者は、アメリカで有症率が3倍になるなど、かなりの勢いで増えているようです。

このステートメントは、乳児の離乳時期において“遅く”ではなく、むしろなるべく“早く”ピーナッツの摂取を開始する方が有益であるというエビデンスを紹介しています。つい最近公表されたハイリスクの乳児に対するピーナッツ摂取のランダム化試験(LEAPスタディー)では、4~11ヶ月のハイリスクの乳児においてピーナッツ摂取が開始されると絶対的値で11~25%のピーナッツアレルギーの減少、相対的には80%も減少するという驚きの事実が示されました。それらの大変重要な発見を考慮して、本ステートメントは、医療関係者が判断する際のピーナッツを早期に導入する利益について、よりよく理解してもらうことを目的としています。

既存のガイドラインやLEAPスタディーに基づいて、次のような暫定的な手引きを医療関係者の臨床的な判断材料とすることを提案します。

・ピーナッツの導入を遅らせることがピーナッツアレルギーの進展のリスクを増大させることに繋がる可能性があるので、ランダム化比較試験のレベル1の科学的なエビデンスとしてピーナッツアレルギーが多い国では乳児期の早期(4~11ヶ月)にピーナッツを含む食品の摂取を開始することを推奨すべきである。

・乳児期早期発症のアレルギー疾患、例えば重症湿疹、生後4~6ヶ月の鶏卵アレルギーでは、アレルギー専門医や乳児期の食物アレルギーの管理などに精通している医師によって診断を受けることがピーナッツを早期に導入すべきというこれらの提案を実行する上で役に立つかも知れない。それらの患者の評価はピーナッツの皮膚テストや診療所でのピーナッツの摂取などに基づくが、続いて患者の家族との検討も適切と思われる。臨床医はピーナッツの皮膚テストが陽性の症例では臨床的に反応するのかどうか、自宅摂取を開始する前にピーナッツ負荷試験を行ってもよいかもしれない。これらの戦略はLEAPスタディーで実際に行われたことである。

・LEAPスタディーでのプロトコール遵守率は92%ととても高く、摂取群では除去群の0g(中央値)に対して週7.7g(中央値)(四分位範囲:6.7~8.8g)のピーナッツタンパクを最初の2年間に摂取できていた。LEAPスタディーの結果は素晴らしいものであったが、その研究からは代わりの容量、臨床的な耐性誘導を成し遂げる最短期間、途中で中止した際や散発的にピーナッツを摂取した際の潜在的な危険性などについては分かり得ない。
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[注釈1]
ステートメントの文献7をみるとピーナッツ摂取を制限していない家庭ではホコリ1gあたりのピーナッツ蛋白量は平均約100μgでしたが、ピーナッツをできるだけ食べないようにしている家庭ではホコリ1gあたりのピーナッツ蛋白量は平均10μg以下でした。日本の平均的な家庭のデータはありませんが、おそらく後者に近い状況であると想像できます。最近の文献によればアトピー性皮膚炎がある場合、家庭のホコリ1gあたりのピーナッツ蛋白量が16μgを越えるとピーナッツアレルギーの発症リスクが高まると報告されています(Brough HA, et al. J Allergy Clin Immunol 2015;135:164-70)。我が国において離乳早期にピーナッツを積極的に摂取すべきかどうかはこれからの研究課題と思います。

[注釈2]
この研究(LEAP Study)で は、すでにピーナッツアレルギーを発症した乳児は危険性が高いとして研究対象から除外しています。ピーナッツの早期摂取により予防効果を得られたのはピー ナッツアレルギーを発症していない乳児に限られることを留意すべきです。もちろん、すでにピーナッツアレルギーを発症している乳児期以降の児のピーナッツ摂取は極めて危険な行為であることはいうまでもありません。


 

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